内は内、外は外、逆に入れることは決して許されません

著者: 阪口 泰弘 ・ カテゴリ: 緊急事態への対応 ・ 公開: 2019/2/14校閲済

内は内、外は外、逆に入れることは決して許されません

火災発生時の初期消火で使用する『泡消火器』の話です。

ご存知の通り、泡消火器の有効期限は1年間です。そのため毎年、消火剤(Agent)を交換します。予備の充填前の消火剤の有効期限は製造後2年以内です。消火剤にはA剤とB剤がありますが、どちらが外筒用でどちらが内筒用かをしっかり確認しなければいけません。

A剤とB剤が混ざらなければ良いのだから、A剤が外側でも内側でも、どちらでも良いと思っている人はいませんか?しかし、逆に入れることは決して許されません。なぜなら内側用の消火剤(B剤)は酸腐食性が非常に強いからです。A剤が外筒用でB剤が内筒用です。A剤の主成分は炭酸水素ナトリウムで、B剤の主成分は硫酸アルミニウムです。そのためB剤は金属を非常に腐食しやすいのです。

以前、機関室に設置している移動式泡消火器(135L)から突然、消火液が漏れ始めたことがありました。調べてみると、外筒の底部が薄くなり無数の穴が開いていましたが、その3ヶ月前に甲板部が消火剤交換作業を実施しました。そのときにうっかり、A剤とB剤を逆に入れてしまったのが原因でした。当時の甲板部作業者が内側と外側を区別することを知っていたかどうかは不明です。もし航海士や船長から作業員が交換作業の注意事項や作業手順のアドバイスを受けていれば、防ぐことができたトラブルでしょう。

泡消火器の外筒(Body)と内筒(Inner Container)をよく観察すると、外筒の材質は鉄ですが、内筒の材質にはアルミ合金やプラスチックが用いられています。理由は内筒に入れる液の酸腐食性が非常に強いためです。そのため内筒には酸腐食に強い材質を使用しているのです。もし、誤って内筒の液を外筒へ入れた場合、鉄製の外筒が簡単に腐食され、結果的に破口してしまいます。

このように普段、何気なく簡単に行っている作業にも落とし穴はあります。その落とし穴に転落しないために作業前Meetingで作業対象機器の構造、特性や作業内容の注意点を確認・周知する必要があるのです。

ちなみに、持ち運び式泡消火器の予備消火剤の所持すべき数量は単純に50%であると私は覚えていましたが、現在の規則では合計数が10個以下の場合は同数(100%)、10を超えた場合は超えた数の50%+10個、60個を越えた場合は60個となっています。例えば8本の消火器であれば8個の予備消火剤が必要です。そして、16本であれば10+(16-10)x0.5=13個となります。これはSOLAS条約 第Ⅱ-2章 C部 第10規則 3.3.1に明確に規定されています。

消火器自体の耐用年数ですが、8年という年数を覚えておいて下さい。陸上用消火器には「製造日から8年経過したものは使用しないでください」とラベルで明示しているそうです。これはある機関が調査したところ、破裂等事故を起こした消火器の殆どが製造後8年を経過したものであることが判明したからです。従って陸上では耐用年数を8年と明確に定めました。

船舶用消火器には耐用年数8年の勧告は適用されていませんが、やはり古い消火器は破裂等の不具合が発生する確率が高くなっているはずです。従って、皆さんも週例点検・月例点検では漫然と消火器を点検するのではなく、古い消火器はしっかりとその状態を点検して、必要ならばためらわずに新品に交換して下さい。